みずあめびより
「え?」

思いがけないことを言われて驚き振り返る。

「最近スマホよく見てて、俺が近くに行くと画面隠すし、俺が帰った時も慌てて何か隠したり・・・。それに・・・最近休憩室でよく新貝と話してるだろ。こないだも俺が休憩室行ったら話してて、俺の顔見て二人して焦った様子で・・・。」

衣緒の表情から何かを読み取ろうとじっと見つめながら言う。嘘をつくのが下手な彼女の瞳が揺れた。

「・・・雑貨ショップとか100円ショップのSNSとか見てるの。新貝さんとは同僚だし、休憩室で会ったら話すよ。」

動揺を悟られないよう努めながら上手くごまかしたつもりだったが、彼にはお見通しだった。

「じゃあ、何で俺にこそこそするんだ?」

「それは・・・。」

痛いところを突かれて思わず目を逸らしてしまった。

「言えないようなこと、あるのか?」

───頼むから『ない』って言ってくれよ・・・。

祈るように衣緒を見た鈴太郎に彼女は苦しそうに答えた。

「・・・今は、言えない・・・。」

しん、と部屋が静まり返り冷房の音がやけに大きく聞こえた。

「・・・わかった。」

───俺達、すごくうまくいってると思ってたのに・・・。俺、飽きられたのかな・・・。

鈴太郎はカタログをローテーブルに置いて力なく立ち上がると廊下に向かった。

「どこか行くの?」

衣緒が慌てて追いかけてくる。

「いや、外暑いし、寝る。」

思っていた以上に冷たい声で言い捨てた自分に鈴太郎は驚いた。

「待って・・・今日(ヽヽ)こんな雰囲気なの嫌だよ・・・。」

泣きそうになりながら言われたその言葉に鈴太郎は思わず振り返った。
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