みずあめびより
鈴太郎は彼女の髪の毛を耳にかけると耳元に口を近づけた。

「今夜・・・どうなっても知らないからな。」

脅すように言うとそのまま耳をくわえる。

「え・・・ぁ。」

ビクッとなる。顔は真っ赤だ。その反応が嬉しくてそのまま唇を首に滑らせる。

「ん・・・!!!」

「そんな可愛い声出して・・・俺のこと(あお)ってるんだよな?」

指の背で衣緒の唇をゆっくり撫でる。

「ち、違っ・・・。」

「俺は明るい時間からでもいいけど・・・むしろ今すぐがいいけど。」

色気を存分に含んだ声で言われ、衣緒は泣きそうになりながら抗議する。

「!!リンくんの方がよっぽどSじゃない・・・。」

「人生でただ一人衣緒にだけだけどな。」

───俺だって自分がこんなこと言うなんて驚いてる。こんな風に気持ちを解放できるなんて・・・。

「・・・私だけ?」

「そうだよ・・・俺しか見られない色んな衣緒の姿を見たくなる。もっともっとって思っちゃうんだ・・・嫌か?こういう俺。」

衣緒は俯いて無言で首を小さく横に振った。

「・・・どうする?パン焼く前に・・・。」

いつになく攻撃的な眼差しで彼女を見つめる。
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