みずあめびより
丈が長めで透け感も少ない控えめなベビードール。

色は大人かわいい落ち着いたピンクが気になったものの、それを買う勇気はなく少しは甘さ控えめと思われるパステルブルーにした。

前見頃は2枚が交差して重ね合わさるようになっていて、胸元の黒のリボンと、胸元及び裾についたベージュカラーのレースがクラシカルな雰囲気だ。

───これならほぼミニのキャミワンピと言ってもいいような感じだし。

元彼の前でも、そして一人暮らしの時ですら肘から上と膝から上が出るような衣服で過ごしたことはなかった。

肩も足もスースーして、まるで着替えているところでこれから上に服を着るか、それか全部脱ぐかの途中の状態かのような気分になってしまう。

鏡に映る自分を見て恥ずかしさで一杯になる。

───服自体はすごくかわいい。でも、自分が着るのはやっぱり・・・。だけど、リンくんが喜んでくれるんじゃないかってせっかく勇気を出して買ったんだし、着るなら今日しかない・・・。昼間抱きついた時みたいに、自分の気持ちを素直に表すって決めたんだ・・・。リンくんもそうしてくれてるんだし。

心もとない胸元を髪で隠すと心を決めて、洗面所のドアを開けた。


「風呂終わった?遅かったけど大丈夫か?」

リビングから鈴太郎の心配そうな声が聞こえ、ドキッとする。

「だ、大丈夫・・・!」

───やっぱり、無理!人はそんなに急に変われない!

小さな声で返事をしてから再び洗面所に引っ込むと、洗濯かごから入浴前まで着ていたノースリーブのロングワンピースと薄手の五分袖カーディガンを取り出す。

───『着替え出すの忘れちゃって・・・』とか言っていつものワンピース取りに行こう・・・。

そう考えていた矢先、背中でドアが開き空気が動いたのを感じた。

「衣緒?大丈夫か?のぼせた?」
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