みずあめびより
「ね?元々そうだったんです。だから気にしないで。」

「でも・・・。」

衣緒は食い下がる男性に言う。

「じゃ、また来年、ここで会えたら、あんず飴おごってください。」

「え?」

「それに、入籍した日にこういうことがあるのはなんか縁起良さそうでむしろありがたいっていうか・・・。」

───赤ちゃんから出たものって何でも綺麗に感じる。それがかかったってことは、私にもいつか・・・リンくんは、子供とか考えてるの・・・?前名前は私に任せるとかって言ってたけど・・・。

鈴太郎に視線を送る。

「ん?」

「帰ろ!観たいテレビ始まっちゃう!」

衣緒は赤ちゃんを女性に返すと鈴太郎の手を掴む。

「あの・・・!」

「じゃっ!!」

男性が声をかけるが衣緒は構わず思いきり走り出す。

「えっ?衣緒!?」

「早く、行かないと、向こうは、若いんだから、追ってこられたら、捕まっちゃうよ、っっ。」

彼女が走りながら苦しそうに言うので、言われるままに並んで走った。
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