みずあめびより
「え?」

どういうつもりかわからないでいると、彼は衣緒の前にしゃがんで後ろに手を差し出す。

「ん。」

「え?」

「・・・この体勢になったら、乗れってことだろ。」

「え?おんぶ?いやいやいや、普通に歩けるよ。」

「でも痛いんだろ?」

「大丈夫だよ。」

「大丈夫でもここは甘えろよ。」

「いや、本当に・・・!」

「車、駅の近くに停めたろ?だからすぐだし。」

「だから、尚更歩けるよ。」

「ほんと、頑固だな。こう言えばわかるか?俺がおぶりたいからおぶらせろよ。」

ぶっきらぼうに言われ、顔が見えないのに照れた顔が目に浮かぶ。

「リンくん・・・。」

「ほら、早く。」

「・・・うん。」

手を鈴太郎の背後から前に回し、浴衣をまくって背中におぶさると彼がゆっくり立ち上がる。

背中のがっしりした感触と首や顔が近いことにドキドキしてしまう。

「・・・その浴衣・・・さ。」

背中に伝わった彼の声の振動が自分の体にも伝わる。

「ん?」

「俺が脱がすまで脱ぐなよ・・・?」

「!!!」

「・・・な?」

「・・・・・・うん。」
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