みずあめびより
「食べないのか?手で半分にしていい?」

鈴太郎は、ぼうっと幸せに浸っている衣緒に声をかけてパンに手を伸ばす。

「あ、はい、ありがとうございます。いただきます。」

パンはどれも美味しかった。パン生地の風味がしっかりとしていてかつ主張が強すぎず、主役となる具材はそれに安心して包まれ、個性を存分に発揮していた。

「あの、このお店、私入って良かったんでしょうか?」

「大丈夫。外から入れる入口もあるよ。」

彼の指差す方向には先程入ってきたのとは違うドアがあった。

「ずっと探してた私の理想のカフェ、ここにあったんだって感じです。」

「・・・また来たい?」

「はい。来たいです。」

「・・・そっか。」

───多分今何も考えずに答えたんだろうけど、次の来店を想像した時、君のとなりに俺はいるのか・・・?

二人は飲み物をおかわりしてしばらく話した。

「サラダの野菜は奥さんの親戚の方が作ったものらしい。」

「どれも味が豊かで美味しいです。おかわりしたけど、お腹に余裕あれば、もう一杯食べたいくらいです。」

話しながら衣緒が窓の外を気にしているのを見て鈴太郎は提案した。

「庭見に行く?」

「はい。」
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