みずあめびより
グループデート?びより
「ポコポコポコポコ・・・。」

───コーヒー、香りは好きなんだけどな・・・。

15時の休憩室。鈴太郎は香ばしい香りを漂わせるコーヒーメーカーの傍らで、持参したハーブティーのティーパックをカップから取り出すと、茶殻用ゴミ箱に捨てた。

様々な色や形のテーブルと椅子が並ぶ休憩室にいるのは彼だけだった。

───はあぁ、俺はいったい何をやってるんだ・・・。

部屋の中ほどにある曲線形の2人掛けテーブルの前に腰かけると何度目かわからないため息をついた。

あの雨の日から一ヶ月が経ち、9月に入っていた。

この(かん)、衣緒を食事、ひとまず昼休みにランチに誘おう、と思っていたのに出来ないでいたのだ。

社員たちが交代で夏休みをとり、その分の仕事が回ってきていたので忙しかったということもある。

でもそれ以上に、調子を狂わされていた。

───今まで、気になった女性を食事などに誘ったことも、告白したこともある。そうしたいと思ったらそう出来た。そうして数回、恋人がいたことがある。でも、何故か彼女を誘おうと思うと、まるで初恋みたいにドキドキしてしまい、うまくいかない・・・。まるで中学生男子、いや、それ以下か・・・。だいたい、普通に上司と部下で昼飯(ひるめし)行ったりするじゃないか・・・。なんでもっと気軽に誘えないんだろう・・・。

一人で悶々としていると、のんきな声に呼ばれた。

「ヨシリーン☆☆☆」

───げ・・・。
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