みずあめびより
「お疲れ様でーす!また面白そうな『やってみた』動画見つけましたよ!」

「お疲れ様です。」

見上げると玉川璃子がランチバッグからスマホを取り出していたので挨拶を返す。

玉川は現在28歳で、衣緒の入社から約一年後に派遣社員として雑貨チームのメンバーになった。

明るく人懐っこい性格で、見た目は明るい茶髪ボブにしっかり目の化粧で少し派手ではあったが、仕事は要領よくきっちりやるタイプだった。

衣緒は彼女に仕事を教えることが多かったので、社内では一番多く話す人物であった。

二人とも昼食はその日の気分や予定、天気などによって家から持ってくるか、コンビニや弁当屋で買うか、店に食べに行くかを決めていた。

持ってきたものや買ってきたものを休憩室で食べる時、どちらかがそこにいれば相席するのが暗黙の了解だった。

衣緒にとっては玉川との会話は最近話題になっていることの情報を得る機会になっていた。

「え~!彩木さん、そのお弁当かわいい~!()え!」

「ばえ?」

「写真映え、SNS映えするってこと。写真撮ってアップしてもいいですか?」

「いいですよ。」

「どこで買ったんですか~、それ?」

「パン屋さんの近くの路地を入っていったところの和風カフェです。デザートについてくるこの和菓子が美味しくて。」

「へぇ~!あたしも今度行ってみよ!」

玉川は素早く指を動かし『先輩とあたしの今日のランチ☆先輩のお弁当かわいくていいな~♪』というキャプチャをつけ自分のカレーと衣緒のお弁当の写真を投稿すると、スプーンを透明なビニール袋から取り出しながら楽しそうに言った。

「ね、ついに今週末ですね。」
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