みずあめびより
触れそうになった瞬間、

「あー!!チューしてるー!!」

「ほんとだー!!」

驚いて塔の入り口を見ると小学生のきょうだいと思われるお揃いのTシャツを着た男の子と女の子が目を見開いていた。こちらも負けないくらい目を見開いてしまう。

「こっちは行き止まりだな。」

父親らしき男性が彼らに追いついてくる。

「お父さん!チューしてたよ!」

男の子が興奮した様子で言うと、奥の二人に気づいた父親は何とも気まずい表情になって言った。

「す、すみません・・・。」

「い、いえ・・・。」

鈴太郎が返すと子供たちの手をひいて引き返そうとする。

「行くぞ。」

「えー、俺、この中探検したいよ。」

「ほら、もう公園閉まっちゃうだろ。行くぞ。」

母親と思われる女性も息を切らしつつやってきた。

「ねー。あんまり走らないで、お母さん、運動不足なんだから。」

「お母さん、あのね、チュー・・・。」

今度は女の子が母親に報告しようとしていたが、父親がそれを遮りおどろおどろしい声を出す。

「ほら、もう暗くなってきたからお化けが出るぞ!逃げろ~!」

「「きゃ~!」」

「待てぇー!」

楽しそうな悲鳴をあげ走り出す子供達を父親が追いかける。

「えぇ、また走るの!?」

母親はうんざりした声で言い渋々、といった様子で彼らを追って早足で歩き出した。


「・・・。」

「・・・。」

二人は少しの間無言であったが、鈴太郎が出口の方に体を向けながら言った。

「・・・行こうか。」

「・・・はい。」
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