みずあめびより
お祭りびより
「カタカタカタ・・・」

───これで失礼じゃないよね?

衣緒は家に着いて折り畳みの携帯を取り出しパカッと開くと、新貝からのメールに返信をした。

『今日はお疲れ様でした(^_^)自然の中気持ち良かったし、バーベキューも美味しくて楽しかったですね♪
すみませんm(__)mお昼休みはしばらく図書館かカフェで勉強する予定です。
せっかくお誘い頂いたのにごめんなさい。』

───ランチのお誘い、断ってしまった・・・玉川さんのことがあるし、例えなかったとしても・・・。

鈴太郎のことが頭に浮かぶ。

───いや、葉吉さんとカフェ行くのは、キーホルダーのお礼で深い意味はないのはわかってるけど。私、今流行ってるものとか知らないのに新貝さんとどんな話していいのかわからないから、つまらない思いさせちゃうと思うし・・・。

携帯を折り畳んでスタンドに立てると、すぐ近くにあるレモンとライムが入ったハーバリウムが目に入った。雨宿りのお礼で鈴太郎に贈る時に試作品として作ったものだった。

正直、お礼以上の気持ちを込めてしまった自覚はあった。彼には気づかれていないと思うけれど。

───カフェは、これとは違ってただのお礼、だよね。あの塔で『試してみた』のも、『やってみた』動画みたいなノリで・・・。

しかし思い返すと彼の眼差しは真剣そのものでとてもそんな風には思えなかった。ノリでそういうことをするキャラにも思えない。

───いや、そんな自意識過剰だよね・・・。新貝さんだって私が変な女だから珍しがってるだけだよ・・・。

頭をぶんぶん振り、洗濯物を取り込むために立ち上がった。
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