みずあめびより
玉川はいかにも『重要案件』というような話し方で話し始めた。

「えっと・・・途中まで一緒に帰ったんですよね?」

予想はしていたものの、新貝の名前が出てきてギクリとする。なんとか平静を装って話の続きを促す。

───こういう時、どういう風に振る舞えばいいんだろう・・・。

「そうなんですよ!私にとってチャンスだったんです!休憩室や会社の飲み会以外で二人きりで話せるなんてなかなかないですから!」

「そうですよね。どんな話したんですか?」

「今観てるドラマとか、流行ってるドリンクとか、SNS映えするスポットとか、好きな動画クリエイターとか・・・。共通の話題が色々あって盛り上がったんです。」

「よかったですね!」

───やっぱり私には語れない話題ばかり・・・。

「それで、あたしすっかりテンション上がっちゃって、新貝さんが降りる駅の直前で、好きな人がいないか聞いちゃったんです。」

「そ、そうなんですね・・・。」

先程よりも数倍鋭くギクリとした。

「そしたらいるんですって。もちろん想定はしてましたけどやっぱり実際に本人の口から聞くと結構ショックというか、そこまではいかないけど、『で、ですよね・・・』みたいな感じで。」

「・・・。」

「でもいいんです!新貝さんの恋が実る前にあたしのこと好きになってもらえればいいんですから!目標地点が決まったら後は走るだけです!」

玉川は目をキラキラさせて宣言した。

「・・・。」

───確か玉川さん元陸上部だったな・・・。素直で眩しい。

「あっ、お昼休み終わっちゃいますよ。」

「本当だ。」

二人は急いで席に戻った。
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