みずあめびより
「俺もない。これはどの絵を引くかっていう運にかかってるんだよな。」

彼はそう言うと店の奥に入って行き、2枚ください、と店主に言う。

「あ、私の分!?払います。」

「いいよ。こんな金額払われても逆に困るし、今日はお礼だから。」

そう言って店主から受け取った型抜きの一枚を彼女に渡す。

「ごちそうさまです。」

「飯じゃないのに?」

「これ、お菓子で、食べられるので。」

「そうなのか!?知らなかった。」

テーブルに着いて絵を見てみると二人とも唖然とした。あまりにも複雑な絵だったのだ。

「こんなのありか?」

「割れる気しかしませんね・・・。」

「とにかくやってみよう。」

「大人になったから、いけるかもしれません。」

相当に慎重に進めていったが、二人とも早々に割れた。

「・・・やっぱり。」

予想通りの結果ではあったが結構がっくりした様子で衣緒が言うと、鈴太郎も力なく同調した。

「これが現実だよな。」

「大人買いして練習したいです。」

「うん。コツ調べてみる。菓子問屋かネットで箱で買えそうだし。簡単なものから徐々に難しくして練習して、次は万全の体勢で望もうな。」

そう語る彼の目は真剣そのものだ。

「・・・。」

───またお祭りに一緒に来るってこと?そんなわけないよね。何考えているんだろう私。それにしてもやっぱり本当は熱い人なのかも・・・。

胸の奥が(うず)くのを感じた。

型抜きのコツや練習方法について話しながら歩いていると、ある屋台の前で二人同時に声を出した。

「あっ。」
「あった。」
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