みずあめびより
それは、あんず飴の屋台の前だった。

「あっ・・・あんず飴、ここにあった。私、お祭りの屋台で一番好きなんです。」

「・・・俺も密かに探してた。祭りなら絶対あるよなって。むしろ、祭りで売ってるもので日常で一番食べなさそうなのって、あんず飴かも。」

「確かにそうですね。水飴単体なら食べるかもしれないけど、果物に絡められてて、氷の上で冷やされてて、モナカに乗せて渡してくれるのなんてお祭りでしか食べませんよね。」

「あんずだけじゃなくて、すももとか、みかんもあるのに、総称して『あんず飴』っていうんだよな。水飴も最近は透明だけじゃなくていろんな味が出てるみたいだし、トッピングも金平糖とか色々あるしな。」

「関西では、あんず飴ってなくて、りんご飴なんですよね。べっこう飴の。りんご飴も可愛くて美味しくて好きです。海外ではハロウィンとかで食べるんですよね。」

「そうそう、おしゃれだよな。あんず飴は、なんか庶民的?ルーレットで当たったら2本とか3本もらえるとか、店の人とじゃんけんして勝ったらもう一本とかあった気がする。」

「わくわくするんですよね。あんず飴って、宝石みたいって言ったら言い過ぎですけど、果物が水飴で包まれてるのが綺麗ですよね。氷の上に色とりどりの宝石が並んでいる感じで。いや、宝石では全然ないんですけど。」

すっかりあんず飴の話で盛り上がってしまった。

「・・・食べようか。」

「はい。その気満々です。ここは私払いますから。」

と言って鈴太郎が口を開く前にお金を払う。

「ルーレット、彩木さんやってよ。俺は運悪いから、さっきの型抜きでも・・・。」

「いや、さっき悪い運を使ったから葉吉さんにはもういい運しかないですよ。」

「あれくらいじゃ悪い運使いきれないだろ。」

「じゃ、一緒に回しましょう。」

二人でルーレットを回した。
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