みずあめびより
「な・・・!ちゃんと話してるのに!?」
彼の腕の中から逃れようともがくが、そうしようとすればするほど、より強い力で抱きしめられ離れてくれない。
彼はしばらくしてから少し体を離してじっと目を見つめてくる。その目線が唇に下がり、人指し指でゆっくりとなぞってきた。くすぐったくてぞわっとする。
「・・・あ、あー、指にリップついちゃいましたよね!?さっき塗り直したから。ウェットティッシュありますよ。」
衣緒は熱っぽい雰囲気をなんとかしたくてわざと大袈裟な調子で言いリュックのポケットに手を伸ばしたが、その手を掴まれ、再度強く抱きしめられた。
「・・・もう少し、このままでいて・・・。」
かすれた声で言われ腕に力がこもる。
「でも・・・。」
出入口の方に目をやる。
「ここは見えないよ。」
先程話していた柵の前から、大きな木の裏にあるベンチに移動していた。出入口から入ると木の正面が見えるのでこのベンチは見えない。
「み、見えなくても・・・。」
───この状態はちょっと・・・!
「頼むから・・・。」
先程の鋭い声とはうってかわった、消え入りそうな切ない声で懇願されると、抗えなかった。
玉川と鈴太郎の顔が頭に浮かび、申し訳ない気持ちになる。
───玉川さん、ごめんなさい・・・!私なんかが新貝さんに・・・。葉吉さんとは、その・・・付き合ってる訳ではないけど・・・でも、『好きだ。』って言ってくれて、私も好きだから・・・。
彼の腕の中から逃れようともがくが、そうしようとすればするほど、より強い力で抱きしめられ離れてくれない。
彼はしばらくしてから少し体を離してじっと目を見つめてくる。その目線が唇に下がり、人指し指でゆっくりとなぞってきた。くすぐったくてぞわっとする。
「・・・あ、あー、指にリップついちゃいましたよね!?さっき塗り直したから。ウェットティッシュありますよ。」
衣緒は熱っぽい雰囲気をなんとかしたくてわざと大袈裟な調子で言いリュックのポケットに手を伸ばしたが、その手を掴まれ、再度強く抱きしめられた。
「・・・もう少し、このままでいて・・・。」
かすれた声で言われ腕に力がこもる。
「でも・・・。」
出入口の方に目をやる。
「ここは見えないよ。」
先程話していた柵の前から、大きな木の裏にあるベンチに移動していた。出入口から入ると木の正面が見えるのでこのベンチは見えない。
「み、見えなくても・・・。」
───この状態はちょっと・・・!
「頼むから・・・。」
先程の鋭い声とはうってかわった、消え入りそうな切ない声で懇願されると、抗えなかった。
玉川と鈴太郎の顔が頭に浮かび、申し訳ない気持ちになる。
───玉川さん、ごめんなさい・・・!私なんかが新貝さんに・・・。葉吉さんとは、その・・・付き合ってる訳ではないけど・・・でも、『好きだ。』って言ってくれて、私も好きだから・・・。