今日もキミに甘え放題



「彩葉ちゃん、いま誰か呼んだ?」

「あ、えっと……こ、ここがわからないから、誰かに教えて欲しいなと思って!」


美咲ちゃんは勉強に集中していたようで、聞かれずに済んだ様子。

本当にあぶなかった……気をつけないと。


「そう……?なんか“悠くん”って呼んだ気が……」

「そ、そ、そんなことひとことも言ってないよ!?」
「あれ、渡辺さん、俺のこと呼ばなかった?」


逆に焦ってしまう私を救うようにして、岸田くんが声をかけてくれた。


「うん……!き、岸田くんって呼んだの!」

「そっか。でも岸田じゃなくて、あたしが教えてあげるよ!」

「ほ、本当に……?ありがとう」


どうやらごまかせたようで安心する。
そして岸田くんのほうに視線を向けた私は、感謝の意を込めて軽く頭を下げた。

岸田くんは優しく笑ってくれ、本当に助けられた。

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