今日もキミに甘え放題



後ろから誰かに名前を呼ばれたけれど、足を止めることはなく。


「渡辺さん!」


目的地などない中、岸田くんの声と共に腕を掴まれ、ようやく立ち止まったけれど。

今のひどい顔を見られたくなかった。


「ご、ごめんね途中で抜け出して……お、お手洗いに行こうかなって」

「人目のつかないところに行こうか」
「……っ」


岸田くんは私に刺激しないよう、優しい声で話してそっと腕を引かれた。


連れてこられたのは屋上前の踊り場で。
扉には“立ち入り禁止”の紙が貼られている中、私たちはそこに腰を下ろした。

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