今日もキミに甘え放題



そのまま受け取ろうとしたけれど、なぜか岸田くんはストラップを持ったまま、手を下ろしてしまった。


「え……」

「なんてね。これが渡辺さんのストラップだって、見た瞬間わかったよ」

「えっと、あの……」


ニコニコと優しい笑顔を浮かべているけれど、なにを考えているのかわからなくて。

戸惑うことしかできない。


一度も話したことがないというのに、どうして私の名前を覚えているのだろう。


「渡辺さんと話してみたかったんだよね。
きっかけができて嬉しいなぁ」

「ど、どうして私のこと……」

「あれ、自分の知名度の高さ知らないの?」
「知名度……」

「かわいいのにおとなしくて地味な、男嫌いのお姫さまだって有名なんだよ」


褒められているのか。
それとも貶されているのか。

わからなくて、ただ呆然としてしまう。

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