最後の夜
「あ、どうも」

かすれた声が耳に入って我に戻る。

「これ、俺の幼なじみの愛。」
「初めまして」

必死に笑顔を作って投げ掛けると、相手も返してきた。

創祐の存在が一瞬にして消えて無くなる。

初めての感覚だった。

「愛?大丈夫かあ?ぼうっとして」
「あ、あ、大丈夫!さっき調子悪かった反動で…」
「え?愛ちゃん調子悪いの?」

創祐と話しているなら平常心が保てるのに、この人が一言でも言葉を発そうものなら、津波のように緊張が押し寄せてくる。
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