最後の夜

記憶の中の聡志

高校生のとき、私は聡志と出会った。

私の住む町が記録的な大雪に見舞われ、町全体が銀世界に変わった日の出来事。

「まじダルいよな」

秀明と言う、当時の彼氏がいた。

「こんな雪じゃ何も動かねえ」

ぶつくさ文句を言っている秀明の横で、私はしらっと煙草をふかしていた。

乗ってきていた単車の上に雪が積もって、動かなくなった。

「歩けばいいじゃん」

寒さに煙草持つ手が震える。

「馬鹿言ってんじゃねえぞ!この単車にどんだけかけたと思ってんだよ!」

むきになっている秀明の馬鹿さにため息をついて、次から次へと雪を降らせる空を見上げた。

灰色の空、灰色の自分。

こんな男と、私はここで何をしているのだろうか?
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