最後の夜
小学校でも中学校でも陸上一本で、私と違って真面目で頭もよくて。

それに加えて創祐の父親は地元の総合病院の名誉院長で、母親は医学部の教授。

申し分ない裕福な生活、富も名声も欲しいままにしていた創祐の家庭。

その家の長男である創祐が、繁華街の一角でホスト…空いた口が塞がらない。

「あんたがホストしなくても十分生きていける家庭じゃん。」

驚きのあまりにかすれた声しか出なかった。

「親とは縁切りした。」

私の言葉に被せるように創祐が言う。

「大学落ちたとき、俺から家を出た。あの家には俺なんか必要ない。」

背中を向けたまま話す創祐の姿を見つめる。
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