陽点  心の中の太陽

車の中だと 案外 気軽に話せたのに。


レストランに 向かい合うと 2人共 ぎこちなくて。


話しが 弾まないまま デザートが 運ばれてくる。


「離婚しないの?」


唐突に 富永さんは聞く。


私は クスッと笑ってしまう。


「離婚したいわよ。でも 色々 考えちゃって。」


「どんなこと?」


「今後の 私の生活とか。子供達のこととか。」


「篠田さんの 生活なら どうにかなるでしょう。今の仕事でも。」


「そうね。あと、離婚にまつわる ゴタゴタとか。」



富永さんは 痛みを堪えるような笑顔をして


「でもさ、一緒に居られるって まだ 愛情があるんだよ。大丈夫。」

と言った。


私は ハッとして 富永さんを見る。




離婚をしないということは そういうこと。


私が どんなに 耐えているとしても。


周りは そうは思わない。



そんなことさえ 私は その時まで 気付かなかった。


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