竜王様、ごはんの時間です！～グータラOLが転生したら、最強料理人!?～

　地図と周りを見比べながら歩いていると、商人さんのような、マントを着た人と目が合いました。マントくらい誰でも着ているんだけど、その人はフードを目深にすっぽりかぶっていたから目に留まったんです。
　マントからはみ出て見えるのは黒髪。そしてフードか邪魔して見えにくいけど、その下から私をじっと見てくるのは、涼しげな黒ヒスイの瞳──。
　ん？　どっちも既視感あるぞ？
　まさか……ね。はははっ！　私の知っている黒目黒髪の人が、こんなところにいるわけないもんね～。人違い人違い。
　自分にそう言い聞かせて、私がしれ～っと視線をはずして前を通り過ぎようとしたのに。
「おい。無視か」
　手首を掴まれました。
　しかもその素敵バリトンボイス。もうビンゴじゃないですか。
　やっぱり私の知っている人だったか～。
「無視じゃないです」
「あんなに目がバッチリ合っておいてか」
「はいそうです！」