隣の席で青春くん


「あ、私行くね!また明日ね、翔子!」



チャイムが鳴り、屋上へ急ぐ。


大丈夫かな…翔子に思いっきり怪しまれたけど。



でも、翔子だし…もし何か勘づいても、多分黙っててくれる。



ギィィィー



重たい扉を開くと、そこにはいつものメンバーがいる。



「あ、彩ちゃん」



「…」



ニコニコと笑いかけてくれる新島くんと、黙ったままの六花ちゃん。



赤澤くんは、本を顔に被せて横になっていた。



「いつも思うけど…みんな屋上くるの早過ぎない?」



「だって俺たちは階段上がってすぐだもん。ね、六花」



「…」



あっ、そっか…新島くんたちは教室から屋上まで近いもんね。


…赤澤くんは、今日1日休みだったのに屋上には来てるし…



「遅い」



私が座ると、本の隙間から赤澤くんが顔をのぞかせる。



「…これでも急いで来たんだよ」



「ふーん」


よいしょ、と赤澤くんが上体を起こすと、サラサラの髪の毛が風に揺れる。



その姿に見とれていると、六花ちゃんがズイっと割り込んできた。




「ゆず。六花今度ドラマに出ることになったから、セリフ合わせ付き合ってよ」



そう言いながら赤澤くんの腕に手を回し肩に寄り添う六花ちゃん。




「なんで俺?葵にやってもらえよ」



あおい……?


チラッと新島くんを見ると、俺の事だよ、と頷く。



新島くん、下の名前葵って言うんだ。



「えー、何で?素人に頼むよりゆずの方がやりやすいもん」




お願い!と手を合わせる六花ちゃん。


そんな様子を見て、赤澤くんは大きく息を吐いた。




「…分かったよ。ちょっとだけな」




「ほんと!?ありがとうゆず!!大好き〜!!」



分かりやすく嬉しそうに笑う六花ちゃんに、不覚にもときめく。



可愛いなぁ…ほんとに。




< 29 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop