隣の席で青春くん
「この街には…帰ってきた感じかな」
「帰ってきた?」
「そう。元々はこっちに居たんだけど、小学校だけは別の所にいたの。それで、中学からこっちに帰ってきたんだ」
「小学校の頃は、どこに?」
「え?隣町だけど…」
「…そう」
赤澤くんは、それだけ言うと目線を落とす。
「何でそんな事聞くの?」
「いや、別に。聞いてみただけ」
「そっか……」
「…」
「…あ、赤澤くんってさ、六花ちゃんと付き合ったりしないの?」
「は?」
「ほら、六花ちゃんて凄く可愛いし…赤澤くんの事好きみたいだし、お似合いだなって葵くんと話してて…」
赤澤くんの眉がピクっと動く。
「葵?」
「へ…」
「いつから葵呼び?」
「さ、さっき…」
「ふーーん……随分仲良くなったんだね」
明らかに低くなった赤澤くんの声に言葉が震える。
なんか赤澤くん、お、怒ってらっしゃる…?
「なんかごめん…気に障ったかな」
「…」
「あ、赤澤くん?」
「運転手さん、ここでいいです」
「はーい」
赤澤くんはお金を渡すと、私の手を引っ張って外に出る。
「っわ…!!」
すごい力に、ビックリして足がもつれる。
そのまま人気のない所で腕を離される。
「あ………赤澤くん…?」
「あのさ」
「っは、はい」
「そういうの、すごいムカつくんだよね」