隣の席で青春くん


「え…」



「佐伯さんさ、俺らの何を知ってる訳?何も知らないくせに、勝手なこと言わないでよ」



冷たい声が耳奥に響く。


赤澤くん、怒ってる…



「ご、ごめんなさい…」



「何も、知らないくせに…」



確かめるように呟いた赤澤くん。


握られた手の震えが、私のか赤澤くんのか分からない。



「赤澤、くん…?」



「…ごめん」



「えっ」




パッと離された手がジンと熱を帯びている。


…悪いのは、私なのに。



赤澤くんは、怒っているというか…



切ない表情をしていた。




「あの、赤澤くん…ごめんね。勝手に1人で盛り上がっちゃって…」




「…」




「二度と言わないから…許してくれる?」




赤澤くんを見上げると、赤澤くんは泣きそうな目をして、少し笑った。



「行こ」




そう言って、私の頭を撫でた。



その表情が、脳裏に焼き付いて離れなかった。



< 38 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop