隣の席で青春くん
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歩き出した赤澤くんの後ろを、無言でついていく。
歩き出して10分も経たないうちに、赤澤くんは足を止めた。
「着いたよ」
「……え」
目の前に聳えていたのは、大きすぎる門。
横にあるシャッターがガラガラと開いて、自然豊かな庭が広がる。
「何この豪邸……」
テレビでよく見るような、和風のお庭。
大きな松の木は丁寧に手入れされており、池には鯉までいる。
すごい、池なのに濁ってない…どれだけ頻繁に手入れしているんだろう。
立派な鯉だな……
「佐伯さん」
「ひぇっ」
「何その声。早く」
クスッと笑う赤澤くんが、玄関先で手招きする。
「あ…はい」
正直もう少し庭見物したいけど…
「お邪魔します…」
家の中に入ると、ふんわりといい木の匂いが香る。
何この玄関……広すぎる。
「お帰り〜柚月」
靴を脱いでいると、頭上から高い声が聞こえてきた。
そこに居たのは、綺麗な女の人。
「……誰?」
「…っあ、お邪魔します!赤澤くんのクラスメイトの佐伯彩と申します」
「佐伯…?」
女の人は、首を傾げて少し考える様子を見せる。
「ねぇ、柚月。佐伯ってー」
「はいはい。いいから」
赤澤くんは靴を脱いだ私にスリッパを差し出し背中を推す。
「え、赤澤くー」
「俺の部屋2階。早く」
急かす赤澤くんに、チラッと後ろをむく。
すると、女の人はニコッと優しく笑い手を振った。
「ごゆっくり」