隣の席で青春くん
「お風呂ありがとうございました…」
「いえいえ……どうしたの?彩ちゃん。顔真っ赤よ?のぼせたの?」
リビングへ戻ると、お母さんが私の顔を見て目を見開く。
「いえ…なんでもないです。お風呂が綺麗すぎて興奮しただけです」
「あらあら…良かったら飲んで」
アイスティーを出してくれた優しい手。
「すいません…」
氷が溶ける音が心地いい。
まだ顔が熱い…
「そうだ、カップケーキを焼いてみたの。良かったら食べない?」
「カップケーキ…」
ほんと、お母さんって感じの人だな…家でカップケーキを焼くなんて。
「美味しいかどうかは保証出来ないけど、一応何回か作ってるから…」
「いい匂い…」
オーブンを開けると、香ばしい甘い匂いがリビングを覆う。
「彩ちゃんは甘いもの好き?」
「はい、大好きです」
「あら良かった〜」
目の前に置かれたカップケーキは、均等な形で焼き加減も抜群だった。
「美味しそう…」
「どうぞどうぞ。何個でも食べて」
「いただきます!」
赤澤くんの家では、こうやっていつもご飯の後にデザートが出てくるのかな。
でもこんな料理上手なお母さんで、美人で、優しくて…完璧だな。
「どう?味は」
「すっごい美味しいです。お店のみたい」
「やだ〜!褒め上手!」
何だか、この短時間で赤澤くんのお母さんと仲良くなれた気がする。
「いつもお父さんも柚月も帰り遅いから、話し相手がいて嬉しいわ。またいつでも来てね」
「…はい、私で良ければ」
ニコニコと笑うお母さんに、つられて笑顔になる。
私達は、年の差なんて関係ないくらい話があって話題が尽きなかった。
「盛り上がってるね」
そう聞こえてきた声がするまで、私達はずっと喋り続けていたのだ。