隣の席で青春くん
高校2年になった頃。
「柚月〜ちょっと言わなきゃいけないことがあるの」
母親が、申し訳なさそうに色んな資料を机に並べる。
「何これ?」
その資料は、学校のパンフレットだった。
「度々で申し訳ないんだけど…また転校になりそう」
「なんで?」
「この間、少しだけ学校に行ったでしょう。その時に、女の子同士で…揉め事があったみたいでね」
この頃は、学校へ行くのにわざわざ変装なんてしていなかった。
学校へ行ける時は行っていたし、本業はあくまで学生で勉強も嫌いではなかった。
ただ、唯一の心配が、母親の言う交友関係。
「大騒ぎにはならなかった…みたいなんだけど、一部の女の子が怪我をしちゃったみたいで、その子の保護者がね…」
「…」
「有名人がいるからこんな事になるって…転校させて欲しいって言われちゃったの」
柚月は何も悪くないのよ、と付け足す母親。
…こんな事は、もう慣れている。
その前の学校でも、女子生徒の彼氏から呼び出されたり女子達が揉めて授業が始まらなかったり。
…俺自身に問題はなくても、俺が原因で起こっていることは事実で。
学校側から、自主退学を希望される場合が多い。
「…いいよ別に俺は。気にしてない」
「ごめんね、柚月…この中の学校から、好きなところを選んでいいから」
「どこでもいいよ。また転校繰り返すだろうし」
「…この学校なんかは、是非って言ってくれてるの。モデル業も理解してくれてて…」
「じゃあそこでいいよ」
「柚月…」
「また面談日とか決まったら教えて」
俺にとって、学校が変わる事はそんなに問題ではない。
…その都度、辛そうな、申し訳なさそうな母親の顔を見るのが嫌なだけで。