隣の席で青春くん



ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーー



母親の推していた学校へ転入が決まり、面談日には行ったがそれ以降学校へ行ける日はほとんど無かった。



それ以上に、忙しくなってしまったのだ。




「はい、いいよー。こっち視線お願い」




「yuzu、少し腕上げて。そうそう」




一日中撮影が続く日もあれば、打ち合わせが続く日もあって。



合間には家庭教師に来てもらって勉強したり、正直言って疲れていた。





「あ、ゆず〜!!!」



少し休憩がてらお茶を飲んでいると、遠くから甲高い声が響き耳を塞ぎたくなる。



「……六花」




「久しぶりだね〜!?最近会えなくて寂しかったーあ、そうそう!これ買ったんだけどね、ゆずのこの表情がすごい好きで〜!」




マシンガントークを繰り広げる六花に、ついていけず目を閉じる。




「あ、もう寝ないでよゆず〜!!」




「うるさいお前は…」




「あ、そうだ。これも聞きたかったんだけど」




自販機でお茶を買うと、六花が向かいに座る。



急に冷静になった六花に、顔を上げる。




「なに?」



「ゆず、転校したんだね」



「なんで知ってー」



「だって、ゆずの転校先。私と葵がいるところだもん」



ニコッと笑った六花に言葉を失う。




「…は?」




「ビックリしちゃった。あ、ゆずのマネージャーに聞いたんだけどね。まさか私たちと同じ学校とは」




…六花がいるから、学校側も寛容なのか。




「六花は、変装とかしてないの」




「変装?してないよ。このまま」




「ふーん…」




「あー、でもゆずは変装しなきゃまずいかもね」




「なんで?」




「六花は強いから、いじめられたりしないけど、ゆずは変な虫がついちゃうよ。学校の為にも、変装した方がいいよ」




「…」




…まぁでも、変装して普通の学校生活が送れるなら、そっちの方がいい。



変に騒がれても周りが迷惑するだけだし。



…今度登校しても、同じ学校に六花や葵がいるという情報があるだけで心做しか安心する自分がいた。






< 65 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop