最高ランクの御曹司との甘い生活にすっかりハマってます
思わず泣きそうになったその表情を、茅野君は見逃さなかった。


「大丈夫ですか? 一花さん、ずっと何を抱えてるんですか? すごく悩んでますよね? 僕じゃ、あなたの気持ちを軽くすることはできませんか? 僕は……」


その時だった。


急に、暗闇から1人の男性が飛び出してきた。


えっ!? な、何?


だ、誰なの?


フードを深く被って、マスクで顔を隠したその男は、右手に光るものを握っていた。


嘘!! ナイフだ。


嫌だ、怖いよ!!


周りには他に誰もいなくて、助けも呼べない。


「危ない!!」、茅野君が叫ぶ。


一瞬、何が起こったかわからなかった。


私の前に背を向けて立っている茅野君。


そして、数秒して……


ナイフを持ったまま男が走り去り、茅野君が膝をついた。


「か、茅野君! 大丈夫!?」


私は動悸が激しくなり、顔が青ざめた。


「だ、大丈夫、心配しないで下さい。腕をちょっと切られただけですから……」
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