最高ランクの御曹司との甘い生活にすっかりハマってます
腕から血がたくさん出て、滴り落ちている。


「こんなに血が出てるのに大丈夫じゃないよ! ちょっと待って」


こういう時の対処法は、ホテルマンとして何度も講習を受けているから心得てる。


急いで、カバンの中からハンカチを取り出して止血した。


「ありがとう……ございます」


茅野君、泣いてる?


頬にひとすじ、光るものが流れた。


「す、すみません。い、痛いから泣いてるわけじゃないですよ」


そう言って、こんな時なのにニコッて笑った。


「茅野君……」


「嬉しいんです。一花さんに止血してもらって……こんな風に優しくしてもらってることが」


「な、何を言ってるの、当たり前じゃない。いいから病院に行きましょ。それに、警察にも届けなきゃ。まずは早く病院に――」


「いいです! 病院なんて……たいしたことありませんから。傷、深くないですから安心して下さい。本当に大丈夫ですから」


茅野君は、必死にそう言った。
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