それつけたの、俺だよ?-六花の恋ー【完】【番外編2完】
3 前世と現世
それから、土日の全部を、わたしは図書館に通うようになった。
那也の試合がある日まで……。
そしていつもいるのは、椅子だけが並んだスペースの、すみっこ。
「千波ちゃー……」
「半径三メートルに近づかないで。色魔」
「……反省してます」
一週間前の日曜日。
こともあろうにこの色魔こと大天使こと悪魔は、わたしの左頬にキスしてきた。
図書館の中で。
「千波ちゃんが可愛いからつい……」
「……そういう軽いこと言うから――」
「千波ちゃんにしか言わないって、もうわかってるでしょ?」
「う……」
本を手にして腕をいっぱいまで伸ばして距離を取っていたけど、その本を呆気なく奪われてしまった。
それからいつものように隣の椅子に座られた。
「……藍田くん、わたしに何度か謝ってたよね?」