それつけたの、俺だよ?-六花の恋ー【完】【番外編2完】
「……言えるわけねえだろ。俺とは別の男に嫁がされて、そのあとにお産で亡くなった……なんて。悲劇過ぎて千波ちゃん哀しませるだけだ。せっかく今の千波ちゃんは前のこと憶えてないだから、わざわざ教えなくていい」
前世、俺たちは恋人だった。
けれどいわゆる身分違いの恋というやつで。
……一緒になることは出来なかった。
「……そっか。『私』がそういう風に考えているなら、私からも絶対に言わない。私もちなは知らない方がいいと思って、今まで前世のことは話して来なかったから」
そう言って、『俺』はコーヒーポットと空のカップをカウンターからダイニングテーブルに置いた。
「私は帰ることにする。ちなが帰って来たらたくさん甘えさせてもらいな」
「……いいのか?」
「変なことしたらさすがにぶっ飛ばしに来るけど、『私』もちゃんとちなのこと好きでしょ?」
「当たりまえ。千波ちゃんにも好きって言ってもらったし」
「ふふー。私はちなに、「お姉ちゃん大好き!」って千回単位で言ってもらってるけど? 抱き付きながら」
「くっそうらやま!」