イケメン男子と疑似恋愛⁉︎
空から降り注ぐ滝のような雨。ザーッと音をたてながら、より一層、空の色を灰色へと変化させている。
こんな雨の中、傘が一つしかなければ一緒に帰るという選択肢しかないのは当然のこと。
─そう自分に言い聞かせて、黙ったまま少し向葵くんに近づくと、傘の中へ入る私。
それを見た向葵くんが一瞬驚いたけど、そのあとに何かを言った。けど、それは雨の音でかき消された。
直後、私の肩を軽く抱く。
それが“走る合図”のように。
えっ……あ、向葵くん…!?
驚く暇もなく走りだした向葵くんに足を揃える私。
傘に弾いて雨の滴がかすかに顔にかかる。
でも、そんなことを気にすることなど今の私たちには余裕なんてなかった。
ドキドキ、ドキドキ──…
肩に触れている向葵くんの手が、密着する距離が、少しずつ私の心を乱していく。
(……な、何これ……っ)