イケメン男子と疑似恋愛⁉︎
向葵くんの右肩のところだけがぐっしょりと濡れていた。
慌てた私は、使いかけだということを忘れてハンカチを向葵くんの肩へ押し当てる。
「…ごめんね。私ばっかりが守られていたなんて…」
「何言ってるの。女の子守るのは当たり前でしょ」
そう言って微笑む向葵くん。
ドキっ──
こんなときにときめくなんて、不謹慎…。
「俺は、結衣ちゃん守れてよかったよ。だって風邪引いてほしくないからね」
「…そ、それは私も同じです。」
「うん。でも俺、男だから大丈夫」
……私だって向葵くんのこと、守ってあげたかったのに。
なんて口では言えないけど思ってる。
小さなときめきを感じながら、向葵くんの肩へハンカチを押し当てていると、それが次第に水分を吸って重たくなる。