イケメン男子と疑似恋愛⁉︎
「ご、ごめんね、向葵くん……」
そんなことにも気づかないで、ドキドキして恥ずかしさでいっぱいな自分のことばかり考えてしまっていた。
それなのに「大丈夫だよ」と笑って言ってくれる向葵くん。
……私、全然ダメだなぁ。
落ち込んでいると「…あ、」と声をもらした向葵くんのそれに反応した私は、視線を向けると、真っ直ぐ伸びてくる手。
えっ……?
な、何……?
驚いた私は思わず、ぎゅっと目を閉じる──
「髪、濡れちゃったね……」
そんな声とともに、髪がふわりと軽くなる。
どうしてだろう? 恐る恐る目を開けると、向葵くんの指先が私の髪の毛を掬っていた。
……えっ──
思わず、息を呑む私。
その瞬間だけが、まるで時間が止まっているかのように錯覚する。
短くて、長いよう。