イケメン男子と疑似恋愛⁉︎
向葵くんの細くて綺麗な指先。透き通ったような瞳。ふわりとした栗色の髪の毛は水分を含み、ぺしゃんこになる。
向葵くんの全部が私へと向いていて、一気に緊張する。
張り詰めた空気のようで。
一瞬、我を失う。
「せっかくふわふわした可愛い髪だったのに、守ってあげられなくてごめんね」
私の髪を掬ったまま、そんなことをポツリと呟く向葵くん。
それにフルフルと小さく首を振る私。
(………顔、熱い…。)
カァッとなって俯くと、ポンポンっと私の頭を撫でた向葵くん。
そのあとすぐに手を離されて、フッと温もりが消えた。
なんだかそれが寂しく感じた、気がした。
(……私、どうしちゃったんだろう。)
その直後、ザーッと降り注ぐ雨の音が、耳へと入り込んだ。