イケメン男子と疑似恋愛⁉︎


カタッ──…

鈍い音がしたあと「結衣ちゃん」と私の名前を呼ぶ声がする。

くるりと振り向くと。

──あっ……


「待たせてごめんね?」


申し訳なさそうに眉を下げて謝る向葵くんの姿が見えた。


「だ、大丈夫!」


私も昨日待たせちゃったし……。

しかも、向葵くんよりもかなり。

「ありがとう」そう言うと、私の教室に入って来る向葵くん。

一歩ずつ近づいて来るたびに鼓動の音が加速していく。

……向葵くんが、ここにいるのがなんだか新鮮で、少しドキドキする…っ


「結衣ちゃんの席、そこ?」

「あっ…う、うん。」


窓際の後ろから二番目が私。

そして、その前が奈央ちゃんの席。

外と近いせいで梅雨の時期は、雨の音がすごくてより一層、憂鬱なの…。
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