イケメン男子と疑似恋愛⁉︎
向葵くんが机に項垂れたことで、私の位置から向葵くんの首元がばっちり見える。
(……うなじ、かわいい。)
普段見ないその姿にきゅんきゅんする。
もぞもぞと動いたあと、顔だけを私の方へ向けた向葵くん。
「…なんか俺、結衣ちゃんと一緒いると自分が自分じゃないみたいになる。」
「えっ……?」
「…かっこよく振る舞えない。」
そう言うと、今度はプイッと顔を逸らされて、向葵くんの顔は見えなくなる。
“かっこよく振る舞えない”?
……私にとっては、いつもかっこいい王子様のままなのに。
「あの、…向葵くん?」
小さく声をかけると「…なに?」と少しだけすねているような声色を出す向葵くん。
それが新鮮に思えて私は思わず、クスッと笑ってしまった。
「…もー。今、結衣ちゃん笑ってたでしょ」
途端に声が聞こえてハッとすると、いつの間にかこっちを向いていた向葵くんの表情は、“照れ”と“すねる”が混合しているよう。