イケメン男子と疑似恋愛⁉︎
向葵くんは、いつも素直に真っ直ぐに言葉を伝えてくれるのに、私は何も言ってあげられることができない。
それが悔しいって思ってしまった。
……私って、恋に憧れてるわりには全然何もできてないじゃん。
向葵くんから視線を逸らして、そんなことを思っていると「あっ、そうだ。」と言って起き上がると、かばんの中をごそごそとあさる向葵くん。
どうしたんだろう……?
「結衣ちゃん、これ」
そう言って差し出されたのは、昨日向葵くんに貸したままになっていたハンカチ。
「昨日はありがとう。すっごく助かった」
「あ、ううん…」
静かにそれを受け取ると、ふわりと香った柑橘系の匂い。
(……私、この匂い好き。)
だって安心するんだもん………