イケメン男子と疑似恋愛⁉︎


たった一つしかなかった傘。

あの、土砂降りで二人入れば確実にお互い、びしょ濡れになるはずなのに……

私の代わりに、向葵くんがびしょ濡れになっていた。

それは私の方に傘を傾けてくれて守ってくれたからなんだよね?

それなのに──…


「私、こんなことしてもらうようなこと何もしてあげてないのに…」

そう、小さく呟くと。


「…うん。でも俺、あのときの結衣ちゃんの気持ちが嬉しかったから」


えっ……

嬉しかった…?


「結衣ちゃん。自分の髪や手も濡れてたのに、それよりも俺の肩を拭いてくれたよね」

「そ、それは…!」


向葵くんがびっしょりになってたから……

だから、風邪ひかないようにと思って……


「俺を心配してくれたんだよね?」

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