イケメン男子と疑似恋愛⁉︎


──そのあと、教室へ戻ると、奈央ちゃんがすごい勢いで私に詰め寄った。


「もーっ!おとなしく待っててねって言ったのに、書き置きもなしにどこ行ってたのよ!」

「ご、ごめんなさい…!」


心配そうな顔をしていた奈央ちゃんに謝った私。

だけど、私の頭の中は、向葵くんと女の子が二人で並んでいた姿が焼きついて離れない。

まるで乾いたペンキのように、こすってもこすっても取れない。


ハンカチをもらったとき、すっごく心がぽかぽかと満たされた気持ちになっていたのに、今はそれが全くなくて。

むしろ、切なささえ感じていた。


かばんに荷物を詰めながら何かを言う奈央ちゃんの言葉を、耳で拾うことはできなかった──。

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