イケメン男子と疑似恋愛⁉︎


校舎裏へ着くと、いつものように向葵くんは、ベンチに座っている。

その後ろ姿を何度見たかな。

何度、ときめいちゃったかな。

(……今日も、かっこいいな。)

立ち止まり、そんなことを思っていると、その瞬間、ふわぁ〜っと強い風が吹いて「ぅわっ!」と思わず声を上げた私。

それに気がついた向葵くんが、私を見て「あ、結衣ちゃん」と手を振ってニコリと笑う。

ドキっ──

無意識に高鳴る鼓動。

私は、それを抑えながら、ゆっくりと静かに、向葵くんのいる方へ歩く。


「今日は、雨降らなかったね」


私の顔を見てそんなことを言う向葵くんに「う、うん。」と小さく返事をすると、緊張したまま座る私。

梅雨の時期だけど、くもり。

だけど、灰色の雲に覆われた空は、いつ雨が降ってもおかしくはなさそう。

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