イケメン男子と疑似恋愛⁉︎


「…だからもう、お試しで付き合うのは終わりにしよう…」


私が言えた義理なんかないのに。

向葵くんみたいにかっこいい人と付き合えただけで、幸せなことなのに。

私は、その幸せを、自ら手放した。


「……それ、本気で言ってる……?」


向葵くんの声を聞くと、言葉に詰まる。

でも私は、それに小さく頷いて「…ごめんね。」と謝ったあと──…


「……今まで、ありがとう…。」


それを聞いた向葵くんは、一瞬、手の力が緩まった。

それを見逃さなかった私は、一気に加速して、そのまま走りだす。


そのあと、向葵くんは追いかけて来なかった。

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