イケメン男子と疑似恋愛⁉︎


そう思ったのも束の間、雨は止むことなく、降り注ぐ。


「ちょっと、場所移動しよう…!」


向葵くんが咄嗟に私の手を掴んで、その力に引っ張られるように立ち上がると、向葵くんのあとを追う私。

……えっ……

手……掴まれてる……?

こんな大変なときに、ときめいてしまうなんて不純すぎる。

私のばか……っ!


渡り廊下へ移動した私たち。

話すタイミングを見失った私は、一気に勇気が萎んでいくのが分かる。


「……話の途中だったよね」

「あ、…うん。で、でも、ここだと雨の音すごいから、移動しない…?」


まだ、決心がついていなかった私は、なんとか時間を伸ばそうと、そんな提案を持ちかけた。

それに承諾した向葵くんは「教室行こっか」と言って歩きだす。

私は、後ろをついて歩いた。

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