こんな溺愛、きいてない!
「凛花があの高校に通ってる理由はさ、

芸能活動が認められてて、
兄弟枠や縁故もきくから、

いつか俺が
高校に通いたくなったときのために
有利だって本郷社長から聞いて、

あの高校に入ったんだろ?」


鈴之助の言葉に
小さくうなずくと、

戸惑う私に、鈴之助が
まっすぐに視線を向ける。


「遥さんが
凛花のことを
すぐ近くで守れるように、

本郷社長に頼んで、
自分の学校に来るように
上手く薦めてもらったんだよ。
 
この家に引っ越してきたのも、
遥さんの部屋の近くだから。

遥さんが、
凛花と会ったのは 
ただの偶然じゃないんだよ」


「……そ、そんなこと、私…なにも、
知らなくて。

でも、言ってくれれば、もっと…」


そう言っている傍から、
ざわりと肌が粟立ち、

ガタガタと震える体を両手で
抱えて、目を伏せる。


呼吸を、整えなきゃって思うけど

怖さのあまり、
喉がキュッと締め付けられる。


「ネットに書かれている内容は
とてもお前に見せられるような
ものじゃない。

あんなもの見たら、
お前は確実に外に出られなくなる。

今ある生活を、
なんとか守ってやりたかったんだよ」


憂いをたたえる遥先輩の瞳を
すがるように、見つめる。


どうしよう……

どうしたら、いい?


震える唇をギュッと噛み締めて、
頭を巡らせてみるけれど、

混乱した頭のなかは真っ白で、
まともに考えることなんて、出来ない……


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