こんな溺愛、きいてない!
放課後、体育教官室に荷物を運んでいると、渡り廊下でバレー部の鈴山くんとすれちがう。



「白石さん。こんなところで何してんの?」



「教官室まで荷物運びを頼まれて」



「よく先生の手伝いしてるよね。でも、白石さんって体育係だったっけ?」



「体育係の子が、大会前で忙しいんだって」



「それ、俺が運んどこうか?」



荷物に手をのばした鈴山くんに首をふる。



「ありがとう、大丈夫。鈴山くんはこれから部活だよね?」



「そうそう」



すると、一歩足を踏み出した鈴山くんが振り返る。



「あのさ、白石さんと2年の神楽坂先輩って、ホントにつきあってるの?」



鈴山くんの言葉に、つい先日の遥先輩との会話がよみがえる。



『親公認、結婚、墓場まで一緒……』



『凛花の全部、俺のもの……』



そこまで思い出して、血液が一気に全身を駆け巡る。



顔、熱い。このままだと出火する……



「白石さん? 大丈夫?」



首をかしげる鈴山くんに、全力で適切な言葉を探す。



「あの、遥先輩とはいかがわしいことなど一切ない、とっても健全な、あの……お、お、おつきあい、を」



「嘘つけ、いっぱいキスしてるじゃん」



……は?



私の肩に顎をのせた遥先輩の顔が、真横に迫る 。



ひいいいっ!



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