こんな溺愛、きいてない!
「……キス?」



唖然としている鈴山くんに、無理やり笑顔を張り付ける。



「イス! イスをね、遥先輩ったら、イスを取りに来たんだって」



「体育館にイス? そうなんだ。じゃ、またね、白石さん」



遠ざかっていく鈴山君を見送ると、全力で遥先輩をにらみつける。



「凛花、耳悪いの?」



「遥先輩こそ、こ、こんなところで誤解されるようなこと、言っちゃダメ!」



「誤解、じゃないよな?」



うっ。



「それより、その荷物かして」



「え?」



「めちゃくちゃ重そう」



「い、いいよ。自分で持ってくよ」



「そんな細い腕で生意気言うな、バカ凛花。ちゃんと彼氏に甘えなさい」



……彼氏?



その一言に、ぼぼっと顔が熱くなる。



「ほら、貸して」



両手でひょいっと私から荷物を取り上げた遥先輩を見上げると、遥先輩の唇が、私の唇にぶつかった。



「あ、あ、あ、っ!」



「ありがとう?」



「ち、ち、ち、ちがっ……」



「あいしてる?」



「違う!」



遥先輩は、キラッキラの甘い笑顔で微笑んでおりますが。



ちょっと待って!



えーっと、たしかここは、渡り廊下の真ん中で。



すぐ隣で野球部がミーティングをしてるのが、遥先輩には見えていないのでしょうか!



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