こんな溺愛、きいてない!
キョトンと
あどけない顔で
鈴之助が振り返る。
甘ったるいアイドルスマイルが
すっかりと
板についているところが
すえおそろしい。
とにかく、鈴之助が楽しんでくれていれば、
それが一番。
うん、それでいいんだけど……
ニコニコと笑っている鈴之助を見て、
小さくため息。
まったく
生まれつきの綺麗なサラサラの黒髪は
どこへいってしまったのか、
いまや、金髪クルクル、
耳にはグサグサと
いくつものピアスが
刺さりまくって。
「そんなんじゃ、
叔父さんも浮かばれないよ」
「つうか、おやじ、死んでないけどな」
「そうだね。
昨日、電話で話したばかりだね。
ほら、鈴之助、そろそろでしょ。
マネージャーの川辺さんのお迎え」
「凛花も車、乗っていく?」
マスクをして、
キャップをかぶりながら
鈴之助が素性を隠す。