こんな溺愛、きいてない!
《素直にならないと、このまま押し倒して、
俺のものにしちゃうよ?》


そのとき、
鈴之助が台本片手に、
セリフを読みながら
リビングルームにやってきた。


「なあ、いいだろ凛花」


「嫌だって言ってる。
ひとりで走りたいの」


《それ以上、わがまま言うと、
キミの可愛い唇を、
俺の唇でふさいじゃうよ?》


鈴之助のセリフが響く。


「ほら、鈴之助もこう言ってるし」


「鈴之助はセリフ練習
してるだけだから!」


ぴったりと隣に移動してきた
遥先輩を両手でぐっと突っぱねると、

鈴之助の声が響く。


《怖がらなくて、大丈夫。
もっと素直になって
こっちにおいで》


「そうそう、
もっと素直になれよ、凛花♪」


《俺にお前の全部を
見せてくれる約束だろ》


「そうそう、約束、約束♪」


「鈴之助、お願いだから、
ここでセリフ練習しないで。
気持ち悪いから、それ!」


「そんなこと言って、
本当は喜んでるくせに。

俺のこと、好きで好きで
たまらないんだろ?」


そう言って、

私の肩に手を伸ばしてきた
遙先輩の腕をガシッと掴む。


「あんたも、簡単に乗っかるなっ!」


もう、なにがなんだかわかからないっ。


つ、疲れる。
とにかく疲れるっ。


家でも全く、疲れがとれない……
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